最高裁判所第一小法廷 昭和２８年（あ）３４４０号 判決
主文
本件上告を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人定方行雄、同今野重男両名の負担とする。
理由
被告人張瑞齢の弁護人鍛治利一の上告趣意第一点は、単なる法令違反の主張であり（原判決の所論判示は、被告人のほか相被告人二名の弁護人が三名のために主張した控訴趣意に対するものであって、被告人のみの関係においては昭和二七年五月一四日密輸入された貨物のみの寄蔵であるから、原判決には所論の違法は存しない。）、同第二点は、違憲をいうが、その実質は、単なる法令違反の主張であって（原判決の判示は正当である。但し四項とあるのは、三項の誤記と認める）、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
被告人定方行雄、同今野重男の弁護人斎藤義家の上告趣意は、違憲をいう点もあるが、その実質は、単なる法令違反、量刑不当の主張を出でないものであって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。（本件当時における関税法七六条の二第一項にいわゆる「貨物」とは、同法七四条、七五条又は七六条の犯罪に係る一切の物品を指し所論のごとき一括して密輸入された物品がその密輸入行為完了後において分散され取引の対象物が一個となった場合でも同条の貨物であると解するを相当とする。）
被告人今野重男の上告趣意は、事実誤認、量刑不当の主張を出でないものであって上告適法の理由に当らない。
また、記録を調べても、本件につき刑訴四一一条一号ないし三号を適用すべきものとは認められない。
よって、同四〇八条、一八一条（被告人定方行雄、同今野重男につき）により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
（裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫）